フォーカシング・サンガ

フォーカシングとマインドフルネスを統合したフォーカシング・サンガを広めるためのブログです。

フォーカシング・マイトリー通信NO.9  2019年1月

○森羅万象の側から自己を修証する○

1月19日にフォーカシング・サンガを広めるための勉強会として、フォーカシング・マイトリー例会を開きました。今回は土江さんが昨年に表された次の文章を元に、絵天楽(アート)フォーカシングに取り組みました。

 

「悟りを深めるためのセルフ・フォーカシング・グループ」 

 道元禅師は『正法眼蔵』の「現成公案」にて、次のように述べています。

 「自己をはこびて(自分のものの見方で)、万法(森羅万象)を修証するを迷いとす。万法すすみて(森羅万象の側から)、自己を修証するは悟りなり。(略)仏道をならふというふは、自己をならふなり。自己をならふといふは、自己をわするるなり。自己をわするるといふは、万法に証せらるるなり。万法に証せらるるといふは、自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり(自分と他者の隔てなく、一緒に悟りに至る)。」

 太字の部分はまさにフォーカシングですし、下線の部分はフォーカシング・サンガ(グループフォーカシング)やセラピーが目指すところです。

 「自己」はあらゆる人間関係や状況との関係上に成り立っています(縁起・空)が、その一々に生じているフェルトセンスに向き合うことで「自己」が軽くなり、忘れていられるようになります。そのためには多くのフォーカシングが必要ですが、セルフ・フォーカシングならば毎日でも可能です。またセラピストは、毎日セルフ・フォーカシングすることによって、クライエントと一緒に「自己」を軽くしていけます。

 セルフ・フォーカシングのためには、「こころの天気」の描画や、短歌を作るなど、紙と筆記用具の助けを借りる方法もありますが、マインドフルネス瞑想をベースに置くことで、もっと気楽に頻繁に行えるようになります。(土江正司)

 

今回の絵天楽(アート)フォーカシングは、<飛鳥(あすか)>というテーマで、飛ぶ鳥になって自分や自分の気がかりを見つめてみて、どんなふうに感じられるか。そうして描きたいものを絵にするワークです。鳥という森羅万象の側から見て、自己を修証する。まだ言葉にならない暗在的なものの手がかりを、描画することで探っていきました。鳥を描く人や、鳥の止まる樹木などの風景を描く人など様々な描画が描かれました。シェアリングでは、いずれも鳥の視点から眺めた時に感じられたことを語られ、質問や感想を述べ合い、気づきを深めました。

私は大きな鳥が羽を広げて飛んでいる姿を描いて、その下に気がかりを表す山々を描きたくなりました。いくつかの山を描いて色を塗る作業を無心に続けていると、次第にモヤモヤしていた気持ちが落ち着いていきました。山を描くと、山の裾に湖を描きたくなり、それぞれ色の違う湖を描きました。山や湖は黙って気がかりを受けとめてくれている感じがしてきました。そして12月のサンガのアートフィーカシングの時に感じたことを思い出しました。その時は<精霊の声を聴く>というワークで、気がかりをイガイガのボール状にして湖に沈めたのです。精霊の声は聴こえてきませんでしたが、湖は黙って、黙々と修復というミッションを行っているのが感じられてきました。その静謐さをしばらく味わったのでした。それを思い出し、描けたうれしさと相まって、より気持ちが安定して、身体が緩んでいきました。

他の参加者からも感想を寄せて下さったので、ご紹介いたします。

 

◎参加者の感想 「日常には喜びも混じっていると気づかしてくれた」 

まず、飛鳥という言葉から大きな鳥が大地を俯瞰している風景が思い浮かびました。その風景は実った稲穂の広大な田圃でした。しかし、瞑想が進むに連れて、小川のせせらぎの繰り返しが印象に残るようになりました。繰り返すものから日常が思い浮かびました。身近な日常と鳥という言葉から家の垣根の山茶花の花と花の蜜を吸いに来ている小鳥が思い浮かびました。すずめ、ひよどり、すずめより少しきれいで少し小さな名を知らぬ小鳥が来て、無心に花の蜜を吸っている姿が思い浮かび、小鳥の目から見える山茶花の花を描きました。私がその光景を見るのは、いつも朝日、昼の光の中だな思い、黄色の光をバックに塗りました。鳥にとって繰り返される日常は花を見つけ、花の蜜を吸いに来ることであり、生きていく上で必要なルーティンですが、何も考えずに自然にしているように見えました。

どうしてこの絵を描いたのが自問自答したときに、私にとって繰り返される日常とは料理、洗濯、掃除などをすることであり、やはり、生きていくためには必要で大切なルーティンだと思ったのですが、決められた(あるいは自分で決めた)ことではあるので、きちきちの服を着て自由に動けないような窮屈さを無意識のうちに感じていたのかもしれないと知らされた気がしました。小鳥もまた、何か感じているのかもしまれんが、無心にしているように見えます。

最初は小鳥の目から見た山茶花の花だけだったのですが、背景を光で塗りたくなりました。どうしてか考えてみると、日常には喜びも混じっていると気づかしてくれたのだと思いました。例えば、ルーティンに含まれない無用の用なのですが、テレビで見た料理をしてみて美味しかったり、自分で編んだ毛糸の手袋を初めて行ったスーパーの店員が褒めてくれたり、本屋で本をレジに持っていくと、私もその作家の本が好きでと言われたり、些細ですが、思いがけない喜びがあることを思い出しました。小さいけれど思いがけない喜びが、自由に伸びうる服になったり、余裕のある服になったりするのかなと今は考えています。

瞑想は最初に聞いた言葉から思ってもいなかったあるいは心の底に沈んでしまった様々な思いを拾い出してくれたように思います。

 

◎12月サンガ参加者の感想 「描くことが好きだという気持ちが蘇ってきた。」大谷理恵さん

サンガ二日目の描画のワークでは、美大時代に他者が見て喜ばれるモノを作るという事を経験した為、ありのままの心の状態を素直に描けるか心配でした。テーマは、気がかりを様々な温泉に癒してもらうという<温泉巡り>。自分と天地の関係があった方がいいと思い縦長に決定。目を瞑ってフェルトセンスと相談して、パステルを絞りこむ。今無いから欲している色なのか?無心の直観の色なのか?沢山の私の内の子と相談。過去の借り物の構図や、上手に描く事だけはやめました。

  1. 今の私の心の温度や色に注目し集中したらやはり暖色。フォーカサーの時間の最後にたどり着いた黄色と橙色2色。でも不安定で怖々しているから弱く細い線でぐるぐる水輪の様。輪郭はぼやけ境界線はあるようでない。
  2. その次に昨夜息子のとった行動に対して起きた怒りを、左上に放射状にとげとげしいタッチの赤色で描く。すぐ傍に自分に対する情けなさで泣いた涙を雨の様に置く。 
  3. 右上には長期蓋をしてきた心理的課題(トラウマや母の死、孤独感やコンプレックス等)を漠然とした重みを表すこげ茶で置いた。昨日だと真っ黒と言い現したが、今日はほんの少し明度のあがった茶色を選べている自分に気づく。ここで大切にされている”どんな感情でも受け入れる”という暖かいスタンスが茶色に変えてくれていると確信。その傍にも、伴う青い涙を雨の様に置いた。
  4. それぞれを温泉に浸からせる。これも抽象的に温泉の熱源だけを、太陽光の橙色の線描で下から温める様に描く。すると私の心の方も温まり癒えて軽くなる感じがしてここから楽しくなってきた!画用紙をくるくると回しながら描いた。赤の怒りと青の涙と茶色の不安が(過去)、光熱を与えることで(現在)それぞれの壺の湯舟に入ってリラックスしてゆく(現在の先)そんな経緯が辿れた。画面上の私から怒りや悩みを少し離した方向に置けたので、ちょうどいい距離感だと満足できた。
  5. 下半分の余白は自分=木のイメージで、植物の緑色と、水の青色と、大地の土の茶色で層のように描いた。私を支えてくれる足元の辺りに脈々と流れているものが、その3つだと観念的かもしれな
  6. いが素直にそれしかないと思えたから。これ以上描くと旬な感覚から遠ざかる。移り変わる心の断片は、さっと切り取って、捨てくのがいい。

自分のフェルトセンスに従いながら、色を置いてかたち作ってゆくというシンプルな作業が、子供のように楽しかった。描くことが好きだという気持ちが蘇ってきた。好きなことを好きと素直に言える清々しさを取り戻せて嬉しかった。衝動と理性との行き来を眺めるという自分の特性も見えた。分かち合いで”黙々と我の黒を修復(治癒)する自然界の水の流れ”や”惜しみなく恵みを与えてくれる人間の英知を超えたエネルギーの木”のことが印象強く残った。私も同感の体験があったから不思議でした。普遍的な世界はひょっとして共通しているのかなと、親近感のような一体感のような感じに包まれ、童心に戻る気持ちで胸がいっぱいになりました。怒涛の感動の嵐でした。その後もフォーカシングの真髄に触れ、目の前に生きている人を大切にし、心と心が触れ合う素晴らしさを改めて教えてもらいました。

今まで抱いていたカウンセリングに対する長年の意固地な心もほどけてゆきそうで、希望が見えてくる様です。フォーカシングが見せてくれる広大な世界が、とても楽しみです。

 

○次回フォーカシング・サンガの予定○ 

講師:土江正司先生(心身教育研究所所長、臨床心理士、フォーカシングコーディネーター)
日時:2019年 3月 31日(日) 10:00~17:00

(3月30日 13:30~17:00 例会アートフォーカシング実施。下記参照)

場所京都市伏見いきいき活動センター(近鉄伏見駅徒歩10分、24号線墨染め通り西北側)

参加費:一般6500円、協会会員6000円

申込み先:フォーカシング・マイトリー担当宮本(focusing.sanga@gmail.com

  メールにてお名前、ご住所、連絡先、所属、協会会員はNOを明記の上、お申込みください。

<フォーカシング・サンガのブログ https://focusing-sanga.hatenadiary.jp/ >

 

○今後のマイトリー例会活動予定

 フォーカシング・サンガを広めるための勉強会を、月1回開催しています。マインドフルネスワークやフォーカシングワーク、アートフォーカシングなどに取り組んでいます。ご興味のおありの方はどなたでも参加できますので、気軽に訪ねてください。

例会日時 2019年 2月10日(日)、3月30日(土) 13:30-17:00 

     3月30日は土江先生がスーパーバイズしてくださいます!!

例会場所 京都文教大学サテライトキャンパス伏見教室

 京阪伏見桃山駅より西へ徒歩5分、大手筋商店街西北側さらしなそば店2階

例会参加費 500円(資料代、飲み物付)(3月30日は1000円)

参加連絡先 フォーカシング・マイトリー担当宮本(focusing.sanga@gmail.com